あなたの姿がぼやけていく。
青空のような笑顔だった、冬の朝の空気の静謐さにも似た表情だった、闇を孕んだ瞳が光っていた、
あなたの姿がぼやけていく。
喉の奥から固まりに似た嗚咽がせりあがってきて、耐え切れずむせぶ。
目から熱いものがとめどなく流れてきていた。
あなたの姿が見えなくなってしまう。
「やっぱり泣いちゃった?」
どうして、そんなに明るい声なの。
あなたは今にも消えてしまいそうなのに。
どうして、また私に笑顔を向けるの?
私はあなたとは敵同士でもうあなたが去っていくのを眺めていて。
「じゃあ、なんでお前泣いてるの。俺とお前は敵同士だろ?」
だって、あなたの姿がぼやけていくから。
私を確かに包んでいたあたたかい笑顔が遠ざかっていくから。
私を確かに射ていた鋭い暗闇の瞳が遠ざかっていくから。
ああ、あなたの姿がぼやけていく。















「アンタも少年と同じ体験する?」

女は必死に悲鳴を堪えているようだった。震える口唇を閉じて、きゅっと結んで、視線を上向けたと思うと男を睨みつけてきた。
しかし、その視線に男が怯むことはない。
エクソシストとはいえ人間の、か細い四肢しか持たぬ女の、精一杯強がっただけの、視線など。アクマである自分には、さらり とかわしてしまえるほどの小さな抵抗に過ぎない。
しかし、むしろここまで抵抗しようとする女の気迫が今まで見てきた女たちと違って面白いかもしれない・・・と男は口の端を吊り上げる。

「ほら」

男は白手袋に覆われた手を伸ばした。
今から、この腕が彼女の体を通過する。
自分の胸を通過する腕を見て彼女はどんな表情をするのだろう、と想像すると自然と心の奥から笑みが零れてきそうになった。
黒い髪を振り乱したりするのだろうか、紅い口唇はどんな言葉を紡ぎだすのか。
悲鳴は上げるだろうか、それとも何もいえなくなってしまうだろうか。
彼女の細い肢体を包みこむ、黒い団服までもう数ミリ。動きは止めない。
少年にして見せたように、その腕は彼女の体を通過していくはずだった。
しかし、女の胸に飲み込まれていくはずだった手は、彼女の胸を包み込んでいた。

「アレ?」

間の抜けた声は、男のもの。
さっきまで戦闘してました、とか。今も敵と対峙してます、と説明しても信じてはもらえないほどに雰囲気にそぐわぬ声音だった。
男は目を丸くして自分の手を見つめている。
彼女の胸を、依然として包み込んでいる手を。
自身の手の感触を確かめるように指を動かせば、柔らかい感触が全身に伝わってくる。
女の胸をもんでしまっているのだ。

緊張と恐怖に戦いていた女もさすがに悲鳴を上げて、どでかいトランクを振り上げた。

「ちょっ、タンマ!」

男は急いで手を離し、胸元で両手を上げるも、女はそんな反応見ているわけがない。
容赦なくトランクが振り回される。
彼女もおそらく相手がアクマだとか、さっきまで戦闘していたなどと考えてはいないのだろう。 痴漢行為に驚き、恐怖し、ひたすらトランクを振り回しているだけなのだろうが。
男にしてみればとんでもない。

「へ!?何!?」

男はぶんぶん音を立てて迫ってくるトランクを避けながら、疑問符でいっぱいの頭に自問自答する。
”なんでオレセクハラしちゃってんの!?”
”なんでオレトランク避けてるワケ!?”
頭ではわかっていてもなんだか避けなくてはいけない気がして、男はトランクを避け続ける。

女は片方の手で胸を庇うようにしながら、トランクを一身腐乱に振り回していて、それは まだまだ止まりそうにない。


空気を切る低い音だけが響いて、その場はなんとも不可思議な雰囲気に包まれた。


















アホな短文です。
胸もませてどうしおうってんだろうな!!(爆)






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