67.好み
「・・・わかんねえ」
息子は口許を歪めて呟いた。隣に座っていた父親はやれやれと頭を振って息を吐く。
「・・・そんなに謎か・・・」
父親自身も謎に思っているのか、彼の言葉にはそんな響きがあった。
「父ちゃんもそう思ってるんだろ。どうして母ちゃんと結婚したのかわかんねえよ」
自分の親のことなのに、口は達者な息子は言う。
「・・・いつか、お前にもわかるさ。俺の子だから」
「なんだよそれ、もっとわかんねえよ」
「・・・そうだな〜あと3年くらいしたらわかるかもな」
「はあ?」
「お前は俺の子どもだし、じいちゃんの孫だからな」
父親は息子の頭を撫でて、口許に笑みを浮かべた。
息子の姿に自分の幼い頃をつい重ねてしまう。仕方ない。
自分は父と同じ轍を踏んでしまったのだ。自分の息子だって・・・どうなるかわからない。
「楽しみだな」
「はあ?何がだよ、父ちゃん」
わけがわからず思いきり顔をしかめる息子に、父親は笑って見せた。
「いつか、わかるさ」