ブログより ハロウィン
「ハロウィンのケーキが1500円か・・・」
ガラスケースの中に並ぶケーキを凝視しながら、新八が呟いた。
あまりにまじまじと真剣な様子で見ているものだから、つい声をかけてしまった。
「欲しいのか?」
欲しいというのなら、買ってやろうと思った。
自分の想いながら、ケーキよりも砂糖よりも甘い行為に砂を吐きそうになる。・・・が、喜ぶというのなら。
新八の笑顔を想像していたら、ばっさりと斬るような現実感たっぷりの声が耳に飛び込んできた。
「いりませんね!その分かぼちゃ買ったら、煮物にもなるしシチューにも入れられるし」
それはまるで強がりのように、自分に言い聞かすように聞こえてきたので。
「そのケーキひとつ」
新八は、少し渋ったような顔をしていたが、ケーキを渡してやるとにこにこと笑い出した。
本当は、食べたかったんだろ?
それくらい、わかるようになったんだ。
「ありがとうございます」
「ちゃんと礼ももらうぞ」
俺は甘い甘い行為を送ったのだから、お前も甘いものを俺にくれ、ということだ。
「家に帰ったら、もらう」
軽く、その頬に指を滑らせて。
真っ赤になった新八の頬をつい、と指で突いてやった。
ブログより
引き出しの中を、探ってみる。探し物は一体どこに仕舞ってあるのだろうか。さっぱり見つからない。
「ちっ」
舌打をして、引き出しの中をぐしゃぐしゃにしていると、一枚のハガキが舞い落ちた。
「っと、これは・・・年賀状か」
あけましておめでとうございます、と書かれたはがき。
いまどき珍しい手書きで、差出人の名前は志村新八。
「懐かしいな」
新八からの年賀状、何年かはこんな年賀状のやりとりをしていたことを思い出す。
年賀状など面倒くさいと思いつつ、少年は生真面目なのかきっちり一日に届くように年賀状を出すものだから、こちらも出さざるを得ない状況になった。
少年から返事が欲しいと強請られたせいでもある。
柄でもないと思いながら、新八が待っているならと投函した。
一年に一回のやりとりを、意外に楽しんでいたのだと思い出す。
いつからか、それは途絶えてしまった。
仕方の無いことだ。
土方は、このハガキは大切にとっておくべきだろうと引き出しの中に仕舞いこんだ。
もう、新八から年賀状がくることはないだろう。
自分も新八に年賀状を送るようなことはない。
「土方さん!?去年の年賀状見つかりました?」
「あー、見つかってねえ。どこにあるんだ?」
「その引き出しの下ですよ。今年は何枚年賀状買いましょうか」
新八の声がする。
新八の姉が嫁に行き、新八が志村家でひとりきりで生活すると知り、広い屋敷と道場があるのだから真選組で使わせてくれ、と頼み込み、転がり込むようにして一緒に住み始めて数年が経つ。
今では新八は家賃収入で安定した生活を送れるようになったし、土方も新八に苦労させず、遠慮されない程度のお金を家に納めている。
一緒に住めば、年始の挨拶は口頭で済ませてしまえる。
年賀状は必要なくなった。
だからこそ、過去の年賀状は大切にしたかった。
「あけましておめでとう、か」
きっと今年も年が変わった瞬間に、囁くのだろう。
素肌に触れながら、熱い吐息に包まれながら・・・新八をいだきながら。
web拍手より
同じ時間に、同じように歩く土方十四郎の姿を見た。
きっと、見回りだ。
同じ時刻に、毎回同じ道順で行われてるのだろう。
「気になるもんか、気になってるもんか!!!」
同じ時間に同じような道を通っていながら、自分に言い聞かせる。
「寒いですね」
「ああ、寒いな」
雪が降って来た。
江戸を白く染め上げる雪の中を二人は歩く。
雪が珍しいのか、子どもたちが傘も差さずに道を駆け巡っていく。
その間を縫うように、新八と土方は歩く。
雪はまだ積もらない。
けれども、結野アナの天気予報では明日まで雪は降り続くと言っていた。
きっと積もるだろう。
新八は、子どもたちに視線を走らせながら小さく口を開いた。
頬が僅かに赤いのは寒いせい、そして気恥ずかしいせいだ。
「雪が積もったら、雪だるま作りましょう」
新八は、子どもっぽいだろうと思ったけれども口に出さずにはいられなかった。
「ああ」
子どもっぽいとは思いながらも、きっと新八以外とは雪だるまなんか作らないだろうと土方は思った。
白い白い雪が重なっていく。
明日にはきっと、雪だるまが二つ並ぶだろう。
煙草屋の前を通る。
自然とあの人の吸っている煙草の箱を探してしまうのは、何故だろう。
あの人がいつも吸っている煙草のパッケージがすぐに頭の中に浮かぶのは何故だろう。
煙草に、煙草の存在に、煙草の匂いに、反応してしまうのは何故だろう、と。
スーパーに行ったら、マヨネーズの棚で止まってしまうんですよ。彼を思い出して。