時刻







時計に目を走らせる。
長針と短針の組み合わせから時刻を読み取り、
―――――きっと今は授業中だろうな
気がつけば、考えている。
いつからか、時計を見ると思考がそこに行き着いてしまうようになってしまった。

彼女は学生で、本業である学業と学校の規則の下にいるのだ。
一定の間隔で返って来るメールに、休み時間の時刻を推理するのは容易なことだった。

最初こそ、小さな子どもを持つ親ではあるまいし、と思った。彼女がXと接触したことを考えているからこそ心配しているのだ、と思った。
心配していることは否定しない、それは最初の事件から彼女を見てきたからだと思っていたのだ。

けれども、自分の行動がそれを否定する。

目で追ってメールをやりとりして、結局心配しているのだ、と言い聞かせて。

今まで、そんな風に他人を想った事はない。

不意に携帯電話が揺れた。
大きく存在を示すように震える携帯を手にとって、画面に浮かんだ文字にどこか心が緩むのを感じた。
桂木弥子
無機質な文字の羅列にどうしてそう思うのか不思議なほど。

携帯を開いて、メールを確認する。
―――――休み時間か


携帯の時計に視線を走らせて、そう思う。
無表情の下に、僅かな感情を忍ばせて返事を打った。








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