悔しさと、愛しさと







悔しいなあ、と新八は思う。
言葉の獰猛さとは裏腹の優しいくちづけを落としてくる沖田に、何故こうも悔しくなるのか。
「どうしたんでェ?」
キスの合間に挟まれた言葉も柔らかく、新八は泣きたくなるような胸の震えに襲われた。
「わからないです…」
どうして、悔しいのだろう。
何か、負けてるような気がするから?
そんな勝負事でもあるまいし、どうして勝ち負けの話になるのだろう。
けれどもこの胸の悔しさは本物で、胸の中をざわざわと騒いでいく感情は、新八の顔を歪めてしまう。
「皺」
おもむろに、沖田に眉間を指で弾かれた。
あまり力は籠もっておらず、痛くはなかったけど、新八は首を後ろに倒して、そのまま視線を沖田の頭上へ据える。
視界の下部分は黒い髪に覆われたが、すぐにその髪は迫ってきた。
すっかりガラ空きになった首をパクリ、と食まれる。
「うひゃあっ!!」
「こっちを見ない罰でさァ」
ペロリと首を舐められ、くすぐったさに新八は首をすくめて、彼を見下ろした。
新八の腰は、沖田の両腕でガッチリと固定されている。抱きしめられたまま見上げられているのだ。
下からの視線を感じて、新八の頬に熱が走る。
その姿勢は、まるで何かを懇願するような、祈りに満ちていた。
けれども、視線の強さは懇願なんて生易しい表現では表せないほどに、強欲な光りを宿していた。
不意に、新八は自分の中の悔しさが、ストンっと落ちていったような気がした。
こんなにも欲しいと強請られているのだと気付いて、やっと自分の想いを理解できた。
自分が鈍いことは、周りの人から散々指摘されてわかっていたつもりだったけれど、やっぱり自分は鈍いらしい。
沖田が自分に向ける感情にも、鈍くて。
自分の感情は、沖田総悟に向かっているけれども、恥ずかしくてそれを表現したことは、数えるほどしかない。
とても、好きなのに。
大好きなのに。
もどかしいのは、それが沖田総悟になかなか伝わらないこと。
もしかしたら、心配をさせてしまったのかもしれない。
想いが、僕に届いていないかもと。
人がいようがなんだろうが、まったく気にせずに抱きついてくるような行為を繰り返してきたのは、そんな不安があったからなのだろうか。
・・・・・・僕だって、アンタのことが好きなんですよ。
その想いは、アンタに負けないくらいに。
「沖田さん」
囁くように名前を呼んで、新八は沖田の背中に両手を伸ばした。
「僕は、沖田さんが好きですよ」
「へえ。奇遇ですねィ。俺も新八が好きなんで」
伸び上がってきた沖田に、ちゅ、と啄ばむようなキスをされた。刹那、身体には驚きが駆け巡ったけれど、表情には出さないように我慢して、不敵に笑ってみせる。
「負けませんから」
「何のことか知りやせんが、受けてたちまさァ」
ニヤリと笑った彼の顔は、お見通しといった風情に満ちていて、また悔しい。
でも、いつか相手を悔しがらせてやろうと思うと、楽しくなってくる。
「今に見ててくださいね」
口の端を吊り上げ、沖田のように笑った新八は、彼の口唇を素早く奪う。
一瞬目を見開いた沖田の驚いた表情を、しっかり瞳に焼き付けて、新八はまるで陽だまりのように微笑んだ。




















最初はタイトルを「シロップ漬けあんこクリームかけ」とか甘くて気持ち悪くなりそうな のにしようと思ったんですが、中身がそんなに甘くも無いと思うので、なんか歌のタイトルみたいなのになりました。



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