短文
踊るような足取りで歩いているのは三浦ハルだ。屈託のない娘、あと少しで自分の存在に気付き、駆け寄って来て、
ご丁寧に頭まで下げて挨拶してくるに違いない。
ヒバリは、身を隠すように素早く脇道に入った。
その行動に意味などあるはずがない。
ただ面倒くさかっただけ。今は挨拶するような気分ではない。返事も無視も億劫だ。
それはひどくいい訳めいている。
奥に隠れる深意をいい訳で塗り固めているかのような。
ヒバリは彼女が通り過ぎるのを待ちながら、自分が自分の行動になにかしらの理由をつけようとしていることに気がついた。
「何を」
考えているのだ、自分は。
いい訳などせずともよい。
面倒くさいだけだ、億劫なだけなのだ。
彼女が自分に対して挨拶してくることが、話しかけてくることが、駆け寄ってくることが。
ただでさえ、自分は風紀委員の襲撃事件でピリピリしているのだから。
ヒバリはじっと、彼女が過ぎ去っていくのを待った。
ただ、ひたすら。
不可解な感情とともに。