web拍手より WJ25ネタバレSS 笹ヤコ→みえるひと→土新






笹ヤコ






笹塚衛士は退屈を持て余していた。
彼は怪我の療養で入院中で、病室のベッドに縫い付けられたような状況にある。
本でも読めばいいと思っていたが、それもいつしか億劫になってきてしまった。
タバコはとっくに医者に取り上げられてしまい、口も指も寂しい状態でもある。

「笹塚さん、大丈夫ですかー?」
そんな中、ひょっこりと病室に現れたのは、桂木弥子だった。
ヤコは手に大きなコンビニの袋を持って、そして石垣を伴ってやってきた。
正しくは病院の前でバッタリ会ったから、案内してもらっただけなのだろうが。
「笹塚さん、調子はどうですか?」
「ん?順調?らしいけど」
「タバコ吸えないって聞いたんで、いろいろ買ってきましたよー」
ヤコは、笑顔でコンビニの袋をベッドの上でひっくり返した。飛び出してきたのは、
色とりどりの飴玉だ。
「タバコは我慢してくださいねーってことで飴を!」
「何こんなに沢山の飴買ってきてるんだよー!ほら、センパイ!リンゴ今切りますから!!」
横から割り込むように石垣がリンゴを持ったまま腕を振り回す。
敵対心が丸見えで、ヤコは小首を傾げた。
「石垣さん、なんで怒ってるの?ほら、どうですか?これ。飴沢山買ったらもらったんですよー」
「あ、それ!おまけの限定品ーーー!!!」
肩をいからせていた石垣だが、ヤコの手の中の限定品を見た途端、喜色を満面にたたえた。
「もしよかったら、もらってください」
「え?いいの?」
こくん、と頷いたヤコの手の平の限定品に向かって、石垣は手を伸ばし始めた。
「ヤコちゃん」
「はい?」
パッ
グシャ
「わあー!!!」
それはとてつもない早業だった。
笹塚がヤコに声をかけ、振り向いた彼女の手の中の限定品を取り上げて、床に投げつけた。
そして、石垣の悲鳴が続く。
「笹塚さん?」
ヤコは目をまん丸にしてビックリした表情を笹塚に投げかけた。
石垣は、床に膝をついて、泣き崩れている。
笹塚は、いつものような表情でそれを受け流した。
実は一番吃驚したのは、自分であるとわかっていながら。

「タバコ、やめてるのやっぱりツライんですよね・・・飴、何味がいいですか!?これなんか
オススメなんですけど!?」
「・・・センパイ、どうしてー!?リンゴがダメだったんですか!?バナナとかみかんがよかったですか!?」

一斉に鳴かれて、笹塚は盛大なため息をついた。
退屈ではなくなったけど、今度はひどく頭が痛いような展開になってしまった。
耳にキンキンと流れてくる声も、つまらない嫉妬に焦がれた自分も。
「・・・痛いな」

「笹塚さん、どこ痛いですか!?タバコどっかに隠し持ってるんじゃダメですよ!?」
「センパイ、それともメロンがよかったですか?桃缶ですか!?」


「・・・・・・・・・」
今は一人ひたることも出来ない。
笹塚は、再び大きなため息をついた。






みえるひと






「アズミ、ゾウさん見たよ!」

「よかったね、アズミちゃん。・・・ゾウさんは、目が荒んでないの?」

「うん!ゾウさんはね、とっても綺麗な目をしてたよ!」




その想いでもって、辿り着いているといい。










土新

未だもどかしいその距離を想う


どこから拾ってきたかわからない手持ちの花火を口に咥えた男は、厠の壁に背を預けて腰を落とした。
あれだけの死闘の後だ。
怪我はすさまじく(何せ頭からものすごい量の血を流している)、戦闘によるダメージが
ありありと残っている。
新八は、その男の斜め向かいで立ち尽くした。
目の前で繰り広げられた戦いが未だ頭を離れない。
新八の目の前の男は、自身の剣で勝利した。
強い侍だ。
かつて自分が夢見たような、今でも憧れるような。
「土方さん」
今までだって何度も何度も会ってるくせに、今日ほど何度も名前を呼んだことはない。
こんなに感情を込めて、この名前を呼んだことは無い。
「ああ?てめーも座れ。目立つだろうが」
「はい」
小さく顎を引いて、新八は土方と同じように壁に背を預けた。
そのまま座り込もうとして、はっと気付く。
すぐ隣には、土方の姿がある。
これが銀時ならば、”疲れました”とか言ってこれ見よがしに体重をかけてやるかもしれない。
神楽ならば、まず傷の具合を見てやろうと手を伸ばすだろう。
では、土方十四郎に対しては、どうすればいいだろう?
傷の程度も心配だし、どうして花火を咥えているのかも疑問だ。
だからといって、すぐさま駆け寄るほどには親しくなくて。
こんな冷静な場面で、一緒になったことは今まであっただろうかと思考を巡らしたが、それは
胡乱気に見上げてきた土方の視線とかちあって、霧散した。
いつまでたっても座らない新八のことを怪訝に思った土方が、新八を見上げたのである。
チラと視線を這わせてみれば、土方と自分の距離は20センチほど離れている。
今更これ以上離れることは出来ないし、近づけもしない。
この程度の距離なら、失礼にはならないだろうか。
「座らねえのか?」
「座りますよ!」
すとん、と座り込んで、もう一度彼との距離を確認した。
遠くも近くも無い距離。
まさに、今の自分たちの状態を表す距離だと新八は思った。
近いようで遠く、遠いようで近い二人の間柄。
新八は、胸の中にほんの少し熱が灯ったような心地を覚えた。
安堵にも似たような感情だ。
だって、この距離は話をするにも声が聞こえる、言葉を逃さない。
手を伸ばせば、その傷にも届く。
触れることが出来る、距離だから。
「土方さん、沖田さんが・・・・・・」













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