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「のう、全蔵。実はな、最近まったく違う未来が見えるのじゃ」 
「いい未来なのか?」 
問うた全蔵の脳裏に浮かんだのは、出逢った頃の少女の冷めた瞳の色だ。 
縛めから逃れられないと悟り、ただただそのままを受け入れようとしていた少女。 
今も彼女はその運命の中、巫女として託宣を続けている。 
あれから何年も経ち、幾度と無く狙われた阿国であったが、全蔵の働きによって全てが未然に防がれた。
初めて護り護られた頃から、二人の関係の間は信用から信頼へ、そして更に形を変えつつある。
「協力してくれるか?全蔵」 
「いいぜ、報酬はずめよ」 
言うと、阿国はにっこりと笑った。 
花の咲くような可憐な笑顔に、不覚にも全蔵はドキリとしてしまう。 
出逢った頃はまだまだ小さかった阿国だが、最近は四肢も伸び、大人びた表情を見せるようになった。
彼女の命と成長を見守ってきた全蔵としてはそれらは喜ぶべきことなのだが、複雑な感情が伴うようになってきた。
自分はそんな趣味は無いと思っていながらも、笑顔によろめきそうになるのだから、厄介だ。
阿国と目を合わせないように少し視線をずらすと、それに気付いた阿国は全蔵の目を覗き込むように 体を乗り出してきた。
大輪の花ような笑みを浮かべ、
「全蔵、私を女にしてくれ」 
ドキリとしたなんて比ではない位に、全蔵の心臓は飛び跳ねた。 
「何言ってやがるんだー!!!??」 
「わしは巫女じゃ。巫女とは清らかな乙女しかなれんのじゃ。逆に言えば、清らかでなくなれば巫女では無くなるのじゃ」 
「・・・え?俺?」 
「ぬしに言っておるのだ!未来が見えたからではないぞ!・・・わしがそう未来を望んでおるからだ」 
ずい、と寄られて全蔵は寄られた分後ろに退く。 
「え?」 
驚く間にも、二人の隙間は狭まり、全蔵の口唇に阿国の口唇が吸い込まれていく。 
「・・・・・・だ、誰に教わったんだ、こんなこと!」 
全蔵は口許を手で覆い隠して、叫んだ。 
キスされたというのに、そんなツッコミしか浮かばない自分が少々情けなくもある。 
仕掛けてきた阿国が涼しい顔をしているから余計に自分のヘタレっぷりが際立つというものだ。 
「少女漫画でやっておったぞ。あとは、えーっとこれをこうしてだな、こうやって・・・」 
「ちょ、どこ触ってるんだ、お前!」
やめろと叫んで彼女を押し留めようと肩に手を添えれば、彼女の体の柔らかさに仰天した。
そういえば久しく触れるという行為を避けてきたことを思い出し、体の芯がジンと痺れる感覚に襲われた。
彼女の身を護ってきたことを思えば、抵抗すべきだと思った。
しかしそうすれば、一番近くで彼女を見てきて生まれた感情は殺すしかない。
阿国の手はあたたかく、全蔵の想いをあっという間に攫っていこうとする。
抗おうとする気力はどこかへ消えて、このまま波に飲み込まれてしまえと囁く自分がいた。
「もう少女漫画なんか買ってきてやらねえからな!」
必死に叫ぶも、それは負け犬の遠吠えというやつだ。
少女の瞳に魅せられて、全蔵は自分の想いに抗うのを止めた。

 








WJ34号の服部全蔵のお話を読んで、即書いたもの。
青年×少女が好きな管理人のスイッチが入った回でした(笑)
数年後の話のつもりで書いてます。 
私の趣味です!!!(爆)




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