旅立ち







新八に「逃げるんですか」と叫ばれて頭に血が上った。
図星を差されたからでもあるが、何より新八は自分の心のことなど知らないのだ。
何故、釘の話をしたのか。
どうして、会わないようにしていたか。
何も知らないくせに逃げるのかと言われて、腹立たしいことこの上無かった。
誰のせいでこんな目に遭っているのだと、八つ当たりしたい気分もあったが、何より自分が逃げているという状況は、プライドが許さない。
今まで悩んだことも、釘の話をして新八を遠ざける契機としたことも、考えることすら放棄して、土方は新八の顎を捉えた。
口唇を奪う体勢だった。予想通り、新八はそれを拒絶した。
「早く逃げろ」
そう告げて逃げ道を作ってやったのに、アイツは逃げなかった。
てっきり、逃げるかと思っていた。
それどころか、
「僕は、逃げませんから!!だから、土方さんも逃げないでくださいっ・・・」
なんて。
どうして新八はこうも戸惑うことを言ってくるのだろう。









「土方さん!」
街灯の下で、手を振っているのは新八だ。すでに陽が暮れたというのに、外で待っていたのだろう、自分を。
すでに陽が落ちるのが早くなっているというのに、なんで考えなしにそんな行動をするのだろうと土方は怒りを覚えた。
待っていてくれることが嬉しくないわけではないが、それよりも家の中の安全な場所にいてくれたほうが安心できて自分としては嬉しいのだ。
街には様々な思惑を持った不逞の輩も大勢いるのだから。
真選組に恨みを持つ者もいるだろうし、万事屋絡みで危険なこともやっているのだから、狙われないとも限らない。
「新八、家の中にいろって言っただろ」
「すいません。買い物、行ってたんですよ」
それは嘘だと簡単に見抜くことができる。けれども、こうまで言われては怒る気になれなかった。
「今度からはちゃんと家にいろ」
ぽんぽんと頭を撫でて、髪をくしゃりとかき混ぜる。くすぐったいのか、新八は目を細めて肩をすくめるよう身を縮めた。
紅潮した頬は、指を沿わせて口唇で味わってみたいほどに艶めいて見えて、土方は新八に早く家に入れ、と促した。
その裏の意図に気付かず、新八は素直に小さく顎を引いた。
「・・・逃げるなよ」
「何か言いました?土方さん」
「いや、何でもねえよ」
口許にかすかに笑みをのせて、土方は新八の肩を抱く。
寄り添って一つになった二人の姿が家の中へと消えていった。














一応、続き物としては完結にあたります。
読んでくださった皆様 ありがとうございました!
「逃げないでください!」からここの最後のお迎えまでは、それはそれは大変だったと 思いますよ(笑)
その間もちょこちょこ書いていきたいなあ。

このお話自体はだいぶ前から考えていた話。
ネタ帳でもけっこう前のページに書いてあって、その間に ネタ帳を新調したりしてしまったせいで、実 は別パターンの「30.無視」と「17.旅立ち」のお話もあるんですよー。
書いてる途中にそれを発見して、どうしようかと思った(笑)


「どう責任とってくれるんですか!?」
「お前がそういうなら、俺にはこんな責任のとりかたしかできねえ」
ちゅーv顎を上向けてv


ネタ帳そのまま転記(笑)
余力があれば、そっちも書いてみたいかもー。








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