慰め
「もうっ」
新八は灰皿に盛られた吸殻の山を見て、肩をいからせた。
1日に2箱は軽くあけてしまうヘビースモーカー、今日も今日とて煙草を吸っている。
「体に良くないですよ」
「わかってるよ」
言いながら、土方は煙草を口にくわえている。紫煙を吐き出し、その手から煙草を離す気配がない。
煙草を消せ、と視線で訴えかけれども土方はそれをさらりと流す。
何度言っても聞かず、改める気がない男に新八はキレた。
「何度も言ってるだろーが!体に悪いですよ、将来肺がんですよ!僕は絶対面倒見ませんからね!!」
叫んで土方の顔を睨めば、彼は煙草をくわえながらも“あ”と口を開けているような風情で、目を丸くしていた。“瞳孔が開いている”と称されるような視線に、新八は何か変なことを言っただろうか、と自分の言動を思い出してはたと気付く。
“将来肺がんですよ、面倒見ませんよ”
将来、なんて。
先のことなどわからないくせに口にして。
面倒見るだの見ないだの、まるで将来を約束した夫婦の、奥さんのようなセリフを吐いて。
新八の頬が朱を流し込んだかのように、染まっていった。何気ない言葉の中に自分の願望を、ずっと一緒にいたいと思っていると気持ちを込めて、吐露してしまった。
土方も新八の言葉の意味に気がついたのだろう。彼の頬も僅かに紅潮してしまっている。
新八が顔を羞恥で真っ赤にして何も言えずにいると、土方は煙草を口から離した。灰皿に煙草の先を押し付けて、完全に火を消す様を見ながら、口を開く。
「・・・・・・煙草がねえと、口寂しいんだよ」
「アメでも買ってきますよ」
土方は、照れたように視線を逸らす新八の手を引いて腕の中に閉じ込めた。柔らかい黒髪に優しく口唇を落として、耳を甘く噛む。
突然降って来た甘い行為に、新八はジタバタと手足を動かし始めた。
「わっわー!アメ買ってきます、それでも舐めて我慢してくださいぃぃ!!」
「・・・寂しいのは口だけじゃねえ」
土方は新八の髪を指先でいじり、輪郭をなぞるように手を走らせた。眼鏡の奥の瞳を見つめながら額に、頬に、口唇を落としていく。頤をなぞり、首筋に指を走らせて。
「指先も、寂しいんだ」
煙草をくわえていた口唇は新八のそれに落とし、煙草を挟んでいた指で新八の鎖骨をなぞる。
“煙草を吸う”
それとはまた違った、けれども確実に土方を高潮させる行為に、彼は没頭していった。