ノート





桂木弥子探偵事務所の探偵、桂木弥子は学生である。
胃がいくつあるのかわからないほどに人並みはずれた食欲を持ち、日々人外の男にこき使われている姿を見ているとつい忘れてしまいそうになるが、列記とした学生である。
その証拠とでもいうべきか、現在桂木弥子は机に教科書とノートを広げている。
因みに探偵事務所における頂点たる男は外出中で、事務所には弥子と吾代の二人きりである。あくまで人間だけの数を数えればであるが。

「学生は大変だなァ、オイ」
手持ちぶさた、けれども事務所から帰れない吾代は、何気なく弥子のノートを覗き込んだ。
机の上には数学の教科書を広げてあった。だから、吾代はそのノートには数式や数字が並べられていると思っていたのだが。

王美屋のフルーツケーキ
若菜のたこ焼き
雁屋のシュークリーム
讃岐うどん

ノートには数字とはかけ離れた文字が書かれていた。
「わっ!吾代さんみないでくださいよ!」
「お前、これ数学のノートじゃねえのか!?」
「だってお腹すいたんですもん!!ネウロはまだ帰してくれそうにないしっ!非常食も食べきったし・・・」
ノートを抱え込んで吾代を見上げるその瞳は、いつもより弱弱しい。“お腹すいた”と眉間に皺を寄せて口を尖らせる姿は、エサを乞う小鳥にも似ていた。
「・・・ったく」
これ以上ねだるような視線を正視できそうになくて、吾代は顔を逸らした。乱暴にポケットに手を突っ込んで、飴を取り出し弥子に投げてやった。
「やる」
銀行に行ってとってきた飴だった。取り放題だったので、取れるだけ取って来たものだ。飴一つとはいえ、今の吾代にとっては貴重な栄養源であるが。
「わあ!吾代さんありがとう!」
飴ひとつで笑顔が戻るなら、安いものだ。
それに、その笑顔は糖分摂取と引き換えにした以上の価値がある。

“ガリっ”
「テメー!噛むな、じっくり舐めろ、最後まで!」
「ああ、ついクセでー!!」
「クセってなんだ、クセって!飴は舐めるもんだろーがっ!」
「ごめんなさいごめんなさいー!」












吾ヤコ。
吾代さんはネウロが怖くて帰れないし、今はヤコと二人きりだし、帰れないし。

雁屋ってのはアイシのまもりちゃんが大好きなシュークリーム屋さんの名前です。
ネウロさんとヒル魔さん、すれ違ってくれないかな(笑)




ノート オマケ

机の上に置かれていたのは黒いノート。
「ねえ、ネウロこれって・・・」
「ヤコよ、いいところに目をつけたな。これは魔界777ツ道具のデスノー・・・・・・」
『どこに逃げてもヤバイ・・・!!』



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